脱北ルートとして活用されている豆満江沿岸(写真:Yonhap/アフロ)

(金 興光:NK知識人連帯代表、脱北者)

 北朝鮮は、鴨緑江と豆満江(北朝鮮と中国の国境を流れる川)の“三千里”(※長い距離のこと。北朝鮮では長い距離の例えとして頻繁に用いられる)に、DMZ(南北非武装地帯)にあるよりもはるかに頑丈な鉄条網や鉄柵、コンクリート壁を設置している。経費がかかるというのに、なぜこのような大規模工事を実施したのか。言わずもがな、脱北を事前に防ぐためだ。

 現在、大規模工事は最後の工期のまっただ中にある。脱北防止用の鉄条網とコンクリートの壁が完成すれば、北朝鮮住民はそれこそ「袋のネズミ」となり、完全に孤立した島に閉じ込められた格好になる。

 さらに、北朝鮮の家族への送金は困難になる上に、中国国境での密輸については考えることすら難しくなるだろう。鴨緑江と豆満江沿岸の密輸経路を通じて密かに流入していた、日本や韓国、欧米諸国のコンテンツ流入もあきらめるほかはない。

 1990年代後半の「苦難の行軍」の前から、北朝鮮は鴨緑江や豆満江を渡る脱出者と密輸業者を射殺してきた。そんな銃声も、今は聞こえないという。

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