(英フィナンシャル・タイムズ紙 2021年11月10日付)

英国がもし北アイルランドに関する協定の破棄をごり押しするようなことがあれば大変だ(写真は北アイルランドのダンルース城)

 ボリス・ジョンソン首相はブレグジット(英国の欧州連合=EU=離脱)を成し遂げるという公約を掲げて、2019年の総選挙に勝った。

 だが、成し遂げられていない。

 英国とEUの「離婚後」の関係は、安定するどころか、悪化している。

 驚くまでもなく、関係が最も険悪なのは、責任が今も共有されている分野だ。漁業がそうした争点の一つだ。

 だが、圧倒的に最も危険なのは北アイルランドだ。

 2019年10月、ジョンソン氏は「素晴らしい新協定」の合意に達したと宣言した。ところが今、この議定書を破棄したがっている。

 悲しいかな、これはジョンソン氏らしいことだ。だが、英国のみならず、EU、さらには西側全体にとっても、危険だ。

 ある意味では、ブレグジットはそもそも、今頃までに「完遂」するはずもなかった。結婚の終わりは、先々までパートナーの見通しを変える。

 また、ほかの条件が全く同じだとすれば、経済的な依存度が大きいパートナーの方が苦しむことになる。

 英予算責任局(OBR)は先月公表した「経済・財政見通し」で、「2016年11月以来、我々の予想は、英国の輸入、輸出総額が最終的に、EUに残留した場合と比べて、いずれも15%低くなると想定してきた。この貿易度減退が、EU離脱の結果としてやがて生じると我々が想定している長期の潜在的生産性の4%の低下をもたらす」と結論付けた。

 この数字を大局的に見るなら、新型コロナウイルスがもたらす長期的コストの推計額の2倍、今日の価値で年間800億ポンドに相当する。