(英フィナンシャル・タイムズ紙 2021年11月5日付)

ヘンリー・キッシンジャー賞を受賞したドイツのアンゲラ・メルケル首相(2020年1月21日ベルリンで、写真:picture alliance/アフロ)

 冷戦時代の中国とソビエト連邦の不和につけ込むことに最も力を入れた外交官として、ヘンリー・キッシンジャー氏のことを中国擁護論者だと見なして退ける人がいる。

 だが、新たな冷戦へと急速に発展しつつある状況のリスクについて同氏が鳴らしている警鐘は、本当に真剣に受けとめるべきだ。

 米ソの軍備管理の大ベテランは、米中間で「過去に例のない歯止めのきかない競争」が展開されると訴えている。

 米国とソ連は1962年のキューバ・ミサイル危機の後、脅威を減じるために交渉を始めたが、今日の米国と中国は互いの能力と意図が全く分からない状況に着実に向かっている。

 これは最初の冷戦とは正反対の展開だ。

「米中関係はパートナーシップから協力関係になり、それが不確実性になってから対決寸前、ないしは現実の対決へと変わっていった」

 キッシンジャー氏は本紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のインタビューでそう指摘した。

「対話が行われない場合、すべての当事者が賢明な決断を下すだろうと期待するのは、何も疑うことなく未来を信じる行為であり、私には受け入れられない」

将来の戦争や地政学的な安定に影響

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、人工知能(AI)の分野でリードする国が世界を支配することになると語った。

 片や米グーグルの最高経営責任者(CEO)だったエリック・シュミット氏との共著で新刊『The Age of AI(AIの時代)』を世に問うキッシンジャー氏は、AIが将来の戦争や地政学的な安定にどんな影響を及ぼすのか、我々はまだ把握し始めてもいないと述べている。

 FTは先日、中国が極超音速ミサイルの実験を行ったことを報じた。