北朝鮮の体制内ではこれまでにない変化が起きている(写真:AP/アフロ)

(金 興光:NK知識人連帯代表、脱北者)

 北朝鮮の体制が大きく変化し始めている。具体的に言えば、金正恩総書記の妹、金与正氏の独裁体制に向け、体制が再編されているのだ。これは、韓国と国際社会が定説と考えている北朝鮮の権力体制の骨組みが、根本から変わったということを意味している。この動きは金与正氏が権力を固める直前までベールに包まれており、無能な韓国の情報機関は一切把握することができなかった。

 北朝鮮からの消息筋によれば、9月末、金与正氏が最高権力機関である国務委員会を手中に収めたという。

 既に知らされている通り、9月29日の最高人民会議第14期5次会議で、北朝鮮の最高権力機関である国務委員会が入れ替わるという大事件が起きた。1年前に任命された金正恩総書記の側近10人中7人が粛清され、新しく金与正氏の側近7人が入り再編成されたのだ。

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 このニュースが流れた時に私が感じたのは、今回の総入れ替えは後先を考えない金正恩総書記がわがまま気質を発揮したのか、ということだった。だが、実際には金与正氏との口論に金正恩総書記が負けた結果だった。

 今回、国務委員会に選ばれた趙甬元(チョ・ヨンウォン)党細胞秘書、呉秀容(オ・スヨン)党経済秘書、金成男(キム・ソンナム)党国際秘書、朴正天(パク・ジョンチョン)党軍事秘書、李永吉(リ・ヨンギル)国防相、張正男(チャン・ジョンナム)社会安全相らは、金与正氏の手足だという。

 金与正氏が対米、対南事業を総括するのは既成事実と化しており、金英哲(キム・ヨンチョル)党通電部長、李善権(イ・ソングォン)外相も、結局は彼女の配下となる。となると、抗日武装革命の血を引く年老いた崔竜海(チェ・リョンヘ)最高人民会議副委員長を除き、金与正氏の手中にない者はいないということだ。