(英フィナンシャル・タイムズ紙 2021年10月25日付)

新型コロナウイルスのパンデミックが始まって以来、多くの新興国・地域は米国などの大きな先進国が経済刺激策で「大きく出る」のを見て、自国も追随する余裕があったらいいのにと思っていた。
ふたを開けてみると、追随できなかったら幸運で、後を追わないことを決めたら賢明だったことが分かった。
最も積極的に景気を刺激した新興国は、派手なバラマキの負の側面も影響し、より速い景気回復という見返りを得られなかった。
多額の支出に踏み切った「ビッグスペンダー」は大抵、インフレ高進と金利上昇、通貨下落に見舞われ、少なくとも部分的に、景気刺激策によるシュガーハイ(一時的な興奮状態)が相殺された。
統計的に識別できる相関はゼロ
2020年の景気刺激策の規模とその後の景気回復の強さの間に統計的な相関があるかどうか探し、トップクラスの新興国、先進国のデータをざっと調べたところ、リンクは全く見つからなかった。
往々にして成長の反発度合いが大きくなる深刻な不況を調整した後でさえ、積極的な金融、財政刺激策は景気回復にそれと識別できる違いをもたらさなかった。
この断絶が最も大きかったのが、中国からチリに至る新興国だった。
主要新興国を支出の多寡で分けると、支出が大きかった国・地域が大抵、弱い回復に苦しめられた。
今年第2四半期を通して、ビッグスペンダーの回復のメジアン(中央値)が前年比12%の国内総生産(GDP)成長だったのに対し、支出の少ない「ライトスペンダー」は19%にのぼった。
最も支出が多かった新興国には、オルバン・ビクトル首相率いるハンガリー、ジャイル・ボルソナロ大統領率いるブラジル、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領率いるフィリピンが顔を出す。
いずれもポピュリスト(大衆迎合主義)の政府だ。