就任会見時の岸田文雄首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(朝比奈 一郎:青山社中筆頭代表・CEO)

 岸田内閣発足から間もなくひと月を迎えようとしています。投開票を明後日に控える衆議院議員選挙の帰趨は未知数ですが、どんなに負けても与党で過半数割れを起こすことはないかと思います。選挙という不安定要因はありますが、すべり出しを見る限り、岸田内閣には安定感を感じます。

 安定感を醸し出している大きな要因は、安倍内閣もそうでしたが、政府の司令塔となる官邸に優秀な人材が集まっていることでしょう。逆に言えば、各省庁がいい人材を送り込んでいます。

首相秘書官に経産、財務両省から2人ずつという異例の起用法

 首相秘書官の陣容が発表され、まず驚いたのは総勢8人という人数です。過去最大級です。普通は外務省、防衛省、警察庁、経産省、財務省あたりから1人ずつ、さらに政務秘書官として首相の事務所から1名起用されたりして、合計6~7人程度になることが一般的です。もちろん過去に8人という例もあったと思いますが、内閣発足と同時に8人体制を整えるのは稀ではないでしょうか。岸田首相が官邸に万全の体制を求めた成果だと思います。

 異例なのは、首相秘書官の人数だけではありません。その顔ぶれもすごいのです。通常の主要官庁から1人ずつという起用の仕方ではなく、経産省と財務省からそれぞれ2人ずつ、後は、防衛省、外務省、警察庁、そして岸田事務所からとなっています。経産省と財務省だけで4人の秘書官を起用しているのです。

 財務省からは前主計局次長の宇波弘貴さんと前内閣審議官の中山光輝さんの2人です。私はおふたりを直接は知りませんが、いずれも能力、人物ともに定評のある方です。

 そして私の古巣でもある経産省からは、元事務次官の嶋田隆さんが筆頭格の首相秘書官になっています。嶋田さんは東大工学部出身ですが、おそらく経産省では通産省時代も含め理系出身の事務次官は初めてではないでしょうか。のちに民主党政権入りすることになる経産大臣を務めた故与謝野馨さんに大臣秘書官時代からずっと重用されたため、自民党政権から嫌われたとも言われていましたが、優秀さは折り紙付きだったからでしょう。見事に最終的には事務次官に起用され、その責務を果たしました。