9月の鉱工業生産指数伸び率(前年比)もわずか3.1%にとどまり、世界金融危機の際の最低値をも下回っている。

 COVID-19の登場から1年半あまり経って、パンデミック以前には耳にすることのなかった低い成長率が公表されている格好だ。

複数の要因から生じたエネルギー不足

 エネルギー不足から順番に見ていこう。

 今回の石炭不足の原因は、構造的なものと偶発的なものとに分けられる。不運な出来事には、7月に河南省、今月には山西省でそれぞれ洪水が発生し、いくつかの炭鉱が閉鎖を余儀なくされたことが含まれる。

 加えて、中国の石炭生産のおよそ4分の1を担う内モンゴル自治区では、汚職の調査が行われ、以前であれば採炭の拡大を承認していたかもしれない当局幹部の一部が関与を問われ、身動きを取れなくなっている。

 中国第3位の石炭生産量を誇る陝西省では、習近平国家主席も出席する9月の全国運動会開催に合わせて空をきれいにするために、石炭生産を減らしていた。

 保安検査官も石炭増産に待ったをかけた。中国では昨年100件を超える産業災害が発生したために、976の鉱山に調査が入った。

 石炭不足のさらに深い理由は、中国が石炭への依存度を低下させようとしていることに求められる。石炭は、この国の二酸化炭素排出で大きな割合を占める。

 政府当局はここ数年、新しい炭鉱の開発や既存の炭鉱の拡張の承認に消極的だ。

 エネルギー・コンサルティング会社ランタウ・グループのデビッド・フィッシュマン氏によれば、炭鉱拡張が「間違った方向にバスを走らせているのは明らか」だからだ。

 供給がタイトになると、本来は価格が上昇し、顧客が節約を余儀なくされる。だが、石炭価格が急上昇しても、発電事業者はコストの上昇を顧客に転嫁できなかった。

 電力の大半を購入している送電事業者に請求できる価格は、基準価格より最大10%しか引き上げることができない。しかも、この基準価格は頻繁には変更されない。

 また、最終需要者が支払う電気料金も、同じようにあまり変更されない料金表に基づいて請求された。

 発電事業者のなかには赤字で運営することを拒み、発電をやめたところもあった。