ミャンマー国軍のトップ、ミン・アウン・フライン総司令官(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 軍政の支配下にあるミャンマーで、国軍が同国西部と北東部に部隊を移動し、近く軍政に反対して抵抗を続ける武装市民や少数民族武装組織に対する大規模な攻勢を開始する可能性が高まっている。

 事態を重視した国連も、軍による大攻勢で市民や少数民族に多数の犠牲者がでる危険性があると警告を発した。クーデター発生前に国際社会から批判を浴びた少数イスラム教徒であるロヒンギャに対する弾圧で起きた虐殺や国境を超える多数の難民発生という事態の再来が懸念されている。

ロヒンギャ弾圧同様の事態が繰り返されるのか

 国連のミャンマー問題を担当するトーマス・アンドリュース特別報告者は10月22日、ミャンマーの北部カチン州や西部チン州などで大規模な国軍部隊の移動が確認されたとの情報に基づき「大規模な残虐という犯罪が起きる可能性が高い」として軍による市民への一方的な虐殺が大規模に発生する危険性を指摘した。

「軍が増強されている地域の住民は十分な警戒が求められている。我々も全員が残虐な犯罪に対して警戒しなくてはならないが、こうした懸念が間違いであることを祈りたい」(同特別報道官)

 クーデター前には、軍による西部ラカイン州で起きたロヒンギャに対する鎮圧・掃討作戦と称する軍事行動が多数の犠牲者と隣国バングラデシュへの約70万人の避難民を生み出し、これが「民族浄化作戦」として国際社会からの厳しい非難を浴びた。

 国連では予想されるミャンマー軍による大攻勢作戦で、この時のロヒンギャに対する暴力、放火、虐殺に匹敵する事態が惹起される可能性が高いとみている。