サステナビリティ(持続可能性)を実現していくために必要なことは社会と企業との関係の再構築。これまでのやり方の延長戦上にサステナビリティのゴールはないからだ。省エネをどれだけ進めても、カーボンニュートラルは永遠に訪れないことは、その好例だろう。それでは、どうすれば再構築が可能なのだろうか。在欧日系ビジネス協議会の事務局長を皮切りに20年以上にわたってCSRの研究に関わってきた多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授の藤井敏彦氏に聞いた。(聞き手 カデナクリエイト 竹内三保子)

改良・改善の延長線上にサステナビリティは存在しない

――CSRの研究を20年以上されてきた中、SDGs、CSVなどさまざまな概念も登場し、また、「SDGs」や「サステナビリティ」という言葉はテレビCMに頻繁に出てくるほどポピュラーになりました。この20年間で日本企業のサステナビリティに対する取り組みは、どのように変化してきたのでしょうか。

藤井 残念ながら、ほとんど変化はありません。本来、それぞれの概念を考え抜いてから取り組むべきですが、そうはなっていない。「CSR」という言葉があまり根付かなかったので、今度は「サステナビリティ」という言葉を使う。もちろん、深く考えて実行している企業もありますが、比率でいえば少数派でしょう。「サステナビリティ」も「SDGs」も希釈され、空気のような存在になっている。だから、言葉の意味を問うことにあまり意味はないと思います。

――企業はどんな行動をすべきだったのでしょうか。

藤井 求められているのは、企業と社会の関係を再構築することだと思います。最も分かりやすいのは自動車でしょう。自動車業界は、これまでずっと燃費の改善に取り組んできました。でも、いくら燃費をよくしても、その改善策の延長線上にカーボンニュートラルはない。EV(電気自動車)や水素エンジンなど新しい技術と、ガソリン車を禁止するという政府の政策を一体化させることで実現させようとしている。このように、小さな努力の積み重ねでは起こりえない大きな変化が起こっています。だから、企業はカーボンニュートラルを実現するために必要なことを、技術の変化、企業と社会の関係の変化、企業と政府の関係の変化などを逆算して考える必要がある。

――日本の企業は、そこを考えるのが不得手なわけですね。

藤井 SDGsは、そうした日本企業の積み上げ方式を肯定する動きにつながるかもしれません。SDGsには17の目標と169のターゲットがあるので、自社の事業に結び付けることは比較的容易です。本来、SDGsのゴールは、現状の積み重ねではできないことですが、事業に結び付けることによって、自分たちの事業はやっぱり正しいと、SDGsの目標に沿った美しい小さな話をどんどん積み上げてしまうわけです。

――欧米の企業は、どうして現状肯定に陥らないのでしょうか。

藤井 特にEUはステークホルダーの関与が強いからです。政府もより深くかかわっています。持続可能な投資かどうかを分類するEUタクソノミーなどは、その典型でしょう。NGOの強さも影響しています。仮にメディア受けしそうなストーリーを作れば、それを評価するどころか、「そこに、どんな意味があるのか」と問うてくるのがヨーロッパのNGOです。企業とNGOの間には一種の緊張感が生まれます。それに対して日本には強いNGOもいない。そうした緊張感がないので、どうしても自己肯定で終わってしまうのかもしれません。