かつては日本でもお見合いによる結婚が一般的だった(写真:アフロ)

「マダンパル」は広場を意味する「マダン」と足を意味する「パル」を組み合わせた語で、顔が広い人を指している。「クモの手」も足が多いクモのように広い人脈がある人を指す言葉だ。

 マダンパルとクモの手は、北朝鮮で男女の結婚を専門に紹介する仲人として、近年力をつけている。マダンパルやクモの手と呼ばれる北朝鮮の仲人たちは、どのようにして力を強めているのだろうか。

(過去分は以下をご覧ください)
◎「北朝鮮25時」(https://jbpress.ismedia.jp/search?fulltext=%E9%83%AD+%E6%96%87%E5%AE%8C%EF%BC%9A)

(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)

 かつて北朝鮮の結婚は、見合いが7、恋愛が3という割合だったが、最近は恋愛結婚の比率が高まり、見合い結婚が3、恋愛結婚が7に変わった。もっとも、見合い結婚の比率は低くなったが、一方で自由恋愛の許されない特権階級の子供が残されたことで、見合いにおける相手の水準は格段に上がっている。

 そこに目をつけたのが、韓国の結婚仲介業を真似れば商売になると踏んだ北朝鮮のブローカーである。中には10年以上前から結婚仲介業に乗り出し、有名になったマダンパルやクモの手もいる。

 マダンパルは平壌の主要権力層を顧客とし、クモの手は地方の金主を相手にしていたが、今では権力と金のために、互いに手を取り合うようになった。資本主義で言う政経癒着のためである。

 権力に金が比例する国は少なくないが、北朝鮮の権力層は職責が上がっても経済力はそれほどではない。基本的に最も資金力に恵まれているのは企業人で、中堅幹部は賄賂をもらう機会が多い労働党の中堅幹部はまだマシだが、上位の幹部が賄賂を受け取れば即死罪になるため、中堅幹部ほどの経済力は持っていない。金正恩総書記から与えられる「プレゼント」に頼ってビジネスを維持しているのが現状だ。

 金正恩総書記は金を誇示する人々を最も軽蔑する。これは金日成主席と金正日総書記の持論で、金を好む人々は首領に対する忠誠心よりも金に忠誠を誓うため、近づいてはならないという金氏一家の人事鉄則である。