(藤谷 昌敏:日本戦略研究フォーラム政策提言委員・元公安調査庁金沢公安調査事務所長)

 新型コロナウイルス発生直後から、世界保健機関(WHO)は、なかなかパンデミックであることを宣言しないなど不可解な動きを連発した。今ではWHOのテドロス・アダノム事務局長(エチオピア)と中国との蜜月関係はかなり周知の事実となったが、中国が国際機関を支配しようという動きはWHOだけに限らない。現在、15の国連専門機関のうち、中国の強い影響力下にあるWHO以外に、国連食糧農業機関(FAO)、国連工業開発機関(UNIDO)、国際電気通信連合(ITU)の3つの機関で中国人がトップを務めている(本年2021年8月までは、国際民間航空機関を含め4機関)。

 中国は自国民を国際機関のトップに据えることで、国際機関の役割を中国に有利なように変質させ、自国寄りのルール作りや情報発信を行っている。

国連での影響力拡大を目指す中国

 中国が国連重視の姿勢を示したのは、2003年、中国政府の法務代表者・顧問を務め、香港に関する中国と英国の交渉に携わってきた史久鏞(シウ・ジウビン)氏が中国人として初めて国連の主要機関である国際司法裁判所(ICJ)の所長に就任したことから始まる。2007年には、香港出身のマーガレット・チャン(陳馮富珍)氏がWHOの事務局長に就任した。