韓国の与党「共に民主党」の大統領選公認候補に決まった李在明・京畿道知事(写真:ロイター/アフロ)

 大統領選挙を150日後に控えた10月10日、韓国の与党である「共に民主党」は、李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事を大統領候補とすることを最終決定した。「日本は敵性国家」「分断されるべきは朝鮮半島ではなく日本だった」などの“反日的”発言で、たびたび議論を巻き起こしてきた李在明知事が正式に大統領選への出馬を決めたというニュースは、日本人にとっても気にかかるところかもしれない。

 8月31日から始まった党内予備選挙で、李知事は累積得票率50.29%で過半数をかろうじて上回り、決選投票なしに“本選”に直行することになった。ただし、敗れた李洛淵(イ・ナクヨン)元首相側が現在もこの結果に不服を示しており、李在明知事の大統領選出馬式は出発からきしみ始めている。

苦学して弁護士、そして政治家へ

 李在明知事は、典型的な「自力成功型」の政治家だ。1964年、慶尚北道・安東で貧農の家庭に生まれた。当時、小学校までだった義務教育を終えると、少年工として時計工場などで働きながら中学校と高校の卒業資格を取得。さらに中央大学校の法学部に入学し、1986年に31歳で司法試験に合格し人権弁護士となった。まさに苦難を努力で乗り越えてきた立志伝中の人物なのだ。

 だがバイタリティ溢れる李氏の活躍の場は法曹界だけに留まらなかった。弁護士時代には京畿道・城南を中心に市民団体を組織して活動していたが、2010年の城南市長選挙に出馬して当選、政治家への転身を果たす。その後、2期連続で城南市長当選に成功するが、2017年に共に民主党の大統領候補を選ぶ党内の予備選挙に出馬する。ただし結果は3位に終わり、大統領選出馬は叶わなかった。

 だがこれで終わりではなかった。2018年になると、人口1350万人を擁する韓国最大の自治体・京畿道の知事選に立候補し当選を果たす。

 もちろん逆風もあった。京畿道知事に当選直後、「選挙運動期間中に行われたテレビ討論会で嘘をついた」という理由で告発され、二審では300万ウォンの罰金を受け、5年間被選挙権が剥奪される危機に追い込まれる。しかし、2020年7月、最高裁の判決で二審判決の破棄が決まり、高裁へ差し戻された。この判決で李氏は窮地を脱することができた。

 そして2021年10月10日、大統領選への2度目の挑戦で、見事に共に民主党の大統領候補に最終選出されたのだった。