南シナ海に展開している英空母「クイーンエリザベス」から発艦する米軍の「F-35B」戦闘機(米海軍のサイトより、10月6日)

 最近、台湾をめぐる情勢がますます緊迫してきた。

 例えば、台湾海峡では10月1日から4日にかけて、中国軍機149機が台湾の防空識別圏(ADIZ)に侵入した。

 特に4日には過去最多の延べ56機がADIZに侵入した。昨年は380機だった侵入機数が、今年はすでに600機になっている。

 この緊張の高まりは、中国がTPP加盟申請を発表した直後に、間髪を入れずに台湾もTPP加盟申請したことに中国が激怒した結果だと思う。

 日米をはじめとして中国のTPP加盟に反対する国々は少なくない。一方で、台湾のTPP加盟に好意的な国々は日本をはじめとする民主主義諸国に多い。

 日本が毅然として、中国のTPP加盟を拒絶すれば中国は加盟できない。TPP加盟問題は中国の負け戦になる可能性がある中で、中国の台湾への強圧的な姿勢は継続するであろう。

 今後、台中間で予期しない偶然の事故などによる軍事衝突が発生することを私は懸念する。

 本稿では緊迫化する台湾情勢と台湾有事について、最近報道された重要事項を中心に解説したいと思う。

台湾の国防部長の驚くべき発言

 台湾と中国の関係が緊張している状況下において、台湾の邱国正・国防部長(国防大臣に相当)から驚きの発言が出た。

 彼は10月6日、立法院における特別防衛予算案(2022年の総額約1兆9000億円の防衛費予算案とは別枠)の審議で、次のような見解を示した。

「中国は既に台湾に侵攻する能力はあるが、得られる結果に比しコストが大きい」

「だが、2025年には本格的な台湾侵攻が可能になる。2025年には台湾の陸・海・空を全面的に支配する能力を持つ」

「中国と台湾の軍事的緊張が過去40年間で最も高まっている」

 この国防部長の発言に私は唖然とした。日本であれば、「中国の侵攻能力が2025年に完成する」という情報は極秘に相当する。

 日本の防衛大臣がこのような極秘情報を公表しようものなら、大変な騒ぎになるであろう。