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(井上 久男:ジャーナリスト)

 FBI(米連邦捜査局)が立て続けに元アップルの社員を逮捕した時期がある。逮捕されたのはいずれも中国人であり、産業スパイをしていた。

 まず2018年7月、中国人の元社員が自動運転関連の技術を盗んだ疑いで逮捕された。シリコンバレーにあるカリフォルニア州サンノゼ空港で保安検査を終えた直後の逮捕劇だった。その容疑者は、中国の広州市に本社を構える新興EVメーカー、小鵬汽車に転職するために出国直前だったという。

 続いて2019年1月には中国国籍の元社員が自動運転関連に関して2000を超える会社のファイルを自分が所有する個人パソコンなどに移して盗んでいたことが発覚し、逮捕された。この元社員も中国に帰国する直前に捕まった。

 米ソ冷戦時代は、国家がコストを顧みずに軍事技術を開発し、それが民間に転用されて一般社会に普及する「軍民転換」の流れだった。しかし現在は、民間企業による技術革新の著しい進化により、民間で開発された技術が軍事に同時に転用される軍民融合の「デュアルユース」の時代に入っている。要は軍・民で技術の境界線がなくなっているということだ。

 こうした状況下でFBIは、民間の企業や研究機関、大学が有する先端技術が流出することを恐れ、取り締まりを強化しているのだ。2020年7月には人民解放軍の将校らが身分を隠して米国滞在ビザを不正取得し、大学の研究者として活動していたとして4人を逮捕した。