習近平国家主席(写真:新華社/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 今や世界第2位のGDPを誇る中国は、雑貨品からハイテクまで世界に商品を供給するとともに、14億人の人口を抱える巨大市場として海外から大量の物資を輸入している。

 また、軍事的には核大国として軍拡を進め、とくに海軍力の膨張は凄まじく、太平洋、インド洋を中心に軍事拠点を整備するのに余念がない。航空母艦も保有し、アメリカに対抗できる軍事力の保持に努めている。台湾に軍事侵攻し、統合する意図も隠していない。

 習近平の狙いは、中華人民共和国建国100年の2049年までに、中国をかつてのように世界一の大国に引き上げることである。「アメリカが支配する世界(パックス・アメリカーナ)」から「中国が支配する世界(パックス・シニカ)」への移行である。

 しかし、習近平の夢が簡単に実現するわけではない。民主主義諸国は警戒を緩めてはならないが、中国経済の行方にも、「一帯一路」の展望にも暗い影を落とすような出来事が起こっている。

不動産価格の暴騰を見て「格差是正」に舵切った習近平

 経済的には、中国の不動産大手「恒大集団」の経営危機である。このニュースが世界に流れ、9月20〜21日、世界中で株価が下落した。2008年のリーマン・ショックの再来を危惧する声もある。23日以降に、社債の利払いが控えており、債務不履行(デフォルト)となれば、世界緊急危機の引き金となりかねないからである。恒大集団には、日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も97億円の投資をしている。

 今の中国の状況は、1986〜1991年の日本のバブル経済、そしてバブルの崩壊を彷彿とさせる。日本では、カネ余りで行き場を失ったマネーが不動産投資に向かった。その結果、地価やマンションなどの物件の価格が急上昇し、バブル経済となった。銀行は購入対象の不動産を担保にして進んで融資を行った。その結果、地上げ屋が暗躍したり、高級外車や絵画などの消費ブームが起こったり、社会全体が浮かれたようになってしまった。