デジタル庁はそのミッションに「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を。」を掲げ、誰でも使えるデジタル社会を築くことを目標に定めている。 写真:つのだよしお/アフロ

 デジタル化の進展に伴い、オンラインで提供されるサービスが増えている。そこに、新型コロナウイルス感染症の拡大も合わさり、今や、非接触・非対面のサービス提供にあたって、デジタルツールは欠かせないものとなってきた。

 デジタル庁はそのミッションに「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を。」を掲げ、誰でも使えるデジタル社会を築くことを目標に定めた。ここでの「誰一人取り残さない」とは、“高齢者や障がいを持っている方にも扱えるUI・UXを目指し、誰も取り残さないこと”であるとデジタル庁は説明している。

 デジタルツールを介した社会参加が必須要件となりつつある現代において、「誰一人取り残さない」社会を実現するためには何が必要であろうか。

全ての人が必要な情報を取得、発信できる状態が必要

 情報アクセシビリティという言葉になじみのない方も多いかもしれない。これは、ICT機器やサービスを使って高齢者や障がい者等が“円滑に”情報を取得・利用できること、またその意思表示や、他人との意思疎通を図れるようにするために、ICT機器・サービス(ウェブシステム、スマートフォン等のデバイス、キオスク端末等)が備えるべき機能である。

 例えば、新型コロナウイルス感染症の状況下において、感染者数や関連情報が行政のホームページ上で公開されるが、代替テキストのない画像やPDFのみの掲載で、読み上げ機能に対応していないとの事象が発生している。これにより、全ての人が平等に得るべき情報を一部の人が得られない状況となっているが、これはホームページに情報を掲載する担当者が情報アクセシビリティに対する知識を有していれば避けられたことである。

 上記は視覚に障がいがある人にとって困難が生じた例だが、情報アクセシビリティは高齢者や障がいのある人のためだけのものではない。情報アクセシビリティに配慮したICT機器・サービスを開発・導入することは、高齢者・障がい者が生活をしやすい世の中に貢献するだけでなく、全ての利用者の満足度向上に寄与するものである。

 例えば、コントラストを調整できる機能は弱視の利用者だけでなく、屋外の強い日差しの中でスマホを操作する場合にも機能する。また、キーボードのみで操作ができる機能は、一時的なけがで腕が使えない場合にも便利である。このように、情報アクセシビリティに配慮された製品・サービスが世の中に浸透すると、全ての利用者のユーザビリティが向上する。

 あらゆるものがデジタル化され、デジタルツールでつながることが一般的になった現代において、高齢者・障がい者にかかわらず、全ての人がそれらを活用でき、必要な情報を取得、発信できる状態となることが求められる。そのためには、企業や行政が提供するICT機器・サービスの情報アクセシビリティへの対応が鍵となる。