(英フィナンシャル・タイムズ紙 2021年9月17日付)

投資家は債務のことなど気にかけず強気の投資を心がけるようになってしまったのだろうか

 今月に入り、米ワシントンの政界で債務という厄介な問題が遅まきながら再び話題に上りつつある。

 ジャネット・イエレン財務長官は8日、連邦議会が債務上限(借入限度額のこと)を引き上げなければ政府は10月中に資金を使い果たすことになると警告した。

 一方、バイデン政権は、過去最高水準に膨れ上がった債務残高を増やすことなく総額3兆5000億ドルと想定される支出計画を実行するために富裕層への増税を求めており、反対に直面している。

「パンデミック・アップデート」に要注目

 しかし、国内財政についてこうした争いが起きている間に、同じワシントンの別の方面――銀行の業界団体である国際金融協会(IIF)――から衝撃的な数字が飛び出した。

 投資家、政策立案者、そして一般市民も注目すべきデータだ。

 世界の債務に関するIIFの「パンデミック・アップデート」に目を通せば、イエレン長官の要求は、債務残高が止めどなく増加している世界の大きなトレンドのごく小さな象徴にすぎないことが分かる。

 そして、この債務の長期的な膨張以上に目を見張るのは、この膨張の結果についての議論が公の場でごくわずかしか行われていないことだ。

 その主な理由は、有権者や投資家が大抵、自身の裏庭で生じている短期的な問題に目を奪われているからだ。

 フランスの知識人ピエール・ブルデューが仮定した概念を引用するなら、世界の債務問題は「社会的沈黙」が生じる典型的な分野だ。

 ブルデューが提起したのは、ゆっくりとしか変化しないとかテクニカルだとか、あるいは文化的なバイアスのせいで漠然と馴染みがあると思われてしまうために、目の前に存在するのに普通無視してしまう問題についての概念だ。