韓国・ソウルで、北朝鮮の長距離巡航ミサイル発射を伝えるニュース番組を見る人々(2021年9月13日、写真:AP/アフロ)

(北村 淳:軍事社会学者)

 北朝鮮が長距離巡航ミサイルの試射に成功した。飛距離は1500km程度であったため、少なくともこの程度の飛翔能力を有したミサイルが実戦配備されれば、北朝鮮国内から日本のほぼ全域を攻撃することが可能となる。

 北朝鮮が対日攻撃可能な長距離巡航ミサイルを手にしたことによって、日本直近の全ての隣国、すなわちロシア、北朝鮮、中国、韓国、そして台湾は日本の領域(全域あるいは一部)を攻撃可能な長距離巡航ミサイルを保有する状況になった。それら隣国のうち台湾を除く4カ国は、いずれも日本の領域(全域あるいは一部)を射程圏に収める弾道ミサイルも保有している。

 それらの長距離巡航ミサイルや弾道ミサイルのうち北朝鮮と台湾の長射程ミサイルはいずれも地上移動式発射装置から発射されるが、ロシア、中国、韓国の長射程ミサイルは潜水艦発射型も対日攻撃が可能である。また、中国とロシアは地上移動式と潜水艦発射型に加えて、水上戦闘艦発射型とミサイル爆撃機発射型の長距離巡航ミサイルも運用中である。さらに中国は弾道ミサイルよりも高速で攻撃する極超音速グライダーも開発中だ。

 もちろん、日本の領域を攻撃することが可能なミサイルを保有していることがそのまま日本にとり直接の軍事的脅威というわけではない。台湾は日本にとってアメリカ以上に親日国といって差し支えないし、韓国も現時点では軍事的脅威とみなすわけにはいかない。