本コンテンツは、2021年8月26日に開催されたJBpress主催「第2回 公共DXフォーラム」の特別講演Ⅲ「デジタル・スマートシティ浜松の推進~国土縮図型都市・浜松の挑戦~」の内容を採録したものです。

 政令指定都市・静岡県浜松市(人口約80万人)は海・川・湖・山などの自然環境に恵まれ、沿岸部・都市部・中山間地域が存在する多様性から「国土縮図型都市」と呼ばれている。そんな立地で「持続可能な都市モデルを確立できれば日本全体のモデルになれる」と話すのは、2007年から現在まで4度当選し、浜松市長を務める鈴木康友氏だ。官民連携で挑む「デジタル・スマートシティ浜松」の取り組みについて聞いた。

2019年に「デジタルファースト宣言」を掲げる

 「人口減少・少子高齢化をはじめとした社会課題が深刻化する中、AI・ICT等先端技術やデータ活用などデジタルの力を最大限に活用し、持続可能な都市づくりを推進する。」

 浜松市が上記の「デジタルファースト宣言」を掲げたのは、2019年10月31日のことだった。同宣言では3つの戦略分野(下記)を掲げ、各領域の第一線で活躍する複数のフェローが招かれた。

①「都市づくり」のデジタルファースト(都市の最適化)

データや先端技術を最大限に活かし、産業の活性化や都市機能の高度化を目指す“デジタル・スマートシティ”政策を推進し、都市の最適化を図ります。

②「市民サービス」のデジタルファースト(市民サービス向上)

AI・ICT等先端技術を活用し、市民サービスを最適なかたちで提供することで、市民の利便性の向上を目指します。

③「自治体運営」のデジタルファースト(自治体の生産性向上)

AI・ICT等先端技術を活用し業務の効率化や高度化を図るとともに、データ活用による自治体運営により、生産性の向上を目指します。

※浜松市「デジタルファースト宣言」(2019年10月31日)より

「2020年4月には庁内組織として『デジタル・スマートシティ推進事業本部』、官民連携組織として『浜松市デジタル・スマートシティ官民連携プラットフォーム』を設置しました。官民連携プラットフォームには、現在までに141の団体・組織が参画しています。そして、2021年3月には『浜松市デジタル・スマートシティ構想』を策定しました。目指す方向性・将来像(基本理念)は、人口減少・少子高齢化やインフラ老朽化、コロナ禍の状況においてデジタルの力を最大限に活用しながら『市民のQOLの向上』と『都市の最適化』を目指し、デジタルで“つながる未来”を官民で共創することです」

 そのために必要な3つの視点として、鈴木氏は「オープンイノベーション」「市民起点/サービスデザイン思考」「アジャイル型まちづくり」を掲げる。基本原則は、G20 Global Smart Cities Alliance(GSCA)に準拠するものを定めた。