新型コロナウィルス感染症第5波では、入院できない感染患者が大量に発生したことが問題になっている。埼玉県さいたま市の『ひかりクリニック』で訪問診療や宿泊療養者の診療に携わっている星野眞二郎院長に、その現状と課題を訊いた。連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第65回。

 第5波の新規陽性者数が劇的に減少しています。これは、多くの方々が進んでワクチンを接種し、また感染対策を徹底してくださった結果だと思います。一医療従事者として感謝申し上げます。

 しかし、医療逼迫は続いています。私が日常的に接している医師の仲間も、看護師も、埼玉県の調整本部の皆さんも、まだまだ精神的な余裕はなく、殺気立っています。余裕がない一因には、お互いにやっていることがあまり見えないことがあるのではないか。そう私は感じています。

 たとえば、現在も多くの方が入院待機されていますが、われわれ入院診療専門の立場からすると、新型コロナの訪問診療がどうなっているのか細部までは見えません。今回は、埼玉県でコロナ禍前から訪問診療に携わっていらっしゃる医療法人誠光会ひかりクリニックの星野眞二郎院長にお話を伺います。

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讃井 ひかりクリニックはコロナ以前から訪問診療をされていますが、何人ぐらいの患者さんを診ているのですか?

星野 約1800人です。主に介護などの施設に入居されている方を定期的に訪問して診ており、何かあれば24時間365日、当直の医師でカバーする体制をとっています。この通常の訪問診療のスキームは、パンデミックが始まってからも大きくは変わっていません。

星野眞二郎(ほしの・しんじろう)
医療法人誠光会ひかりクリニック院長。1992年、山形大学医学部を卒業後、高齢者医療を志し、東京大学医学部附属病院老年病科に入局し、文部教官助手に。その後、海外医療を学びに中国大連市中心医院日本人医療相談室に勤務し、海外邦人の全人的医療に従事。帰国後、沖縄の総合病院の急性期/慢性期/リハビリ病棟で得た知識と経験を活かし、2017年から、ひかりクリニック院長として訪問診療の世界へ。