(岡村進:人財育成コンサルタント・人財アジア代表取締役)

 前回の寄稿で、私はアメリカ大統領、ビル・クリントンが1998年に来日した際のスピーチを紹介した。目の前で聞いていた私はその記憶が今も鮮明に残っている。彼のスピーチはなぜ忘れられないものとなったのか。

(前回記事)「伝える力」が急伸する、人と話すとき絶対やるべき「ある習慣」〈https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/66867

 感動ポイントは、彼は支持者のアメリカ人におもねらない姿勢、中身の簡潔さと程よいスピード、そして最後に支持者たちに敬意を表したことだった。

 もっと身近なところで、みなさんの会社ではどうだろうか? 上司の話は面白いだろうか? 皆さん自身は上手に話せているだろうか?

プレゼン技術の必勝法

 前回、私は日本人にとってプレゼンテーションは「苦手科目」といったが、厳密にいえば、「未履修科目」だ。ほぼ習ったことがない。

 しかし、一度もプレゼンを習ったことのない日本人生徒の成長ポテンシャルは実はかなり高い。学び方を知らなかっただけで、やればかなり伸びる未開拓ゾーンなのだ。

 あがり症でスピーチ下手だった私が、話し方変革(まだ改善)を成し遂げていったプロセスをざっくりと記してみたい。3カ月から半年で小さな変化、1年で小さな自信、3年で自分のスタイル確立が可能となるだろう。

(1)心構え・・・あがり症を抑えるための地味だが最強の薬
 ハウツー本に書いてあるような防止策をいろいろ試してみたがどれもダメだった。イケてる人財だと思われたい欲が勝っているうちは、何を工夫してもあがる。大人数になってくると緊張のあまり心臓は破裂寸前になる。

 対症療法ではなく、もっとも有効な内服薬になったのは、「100%聴衆の役に立つことだけを考える」と心に決めたこと。準備段階から、〈これを言うとウケるかな?〉とか言った発想を完全に払しょくする。

〈これは喜ばれるか? 新鮮な話か? 一時間かけて聞いてもらう意味があるネタか?〉と純粋に100%相手目線だけで吟味するようにした。だから、プレゼン中も自然に、「いま話していること伝わっていますか?」「私の説明下手でないですか?」「メッセージに意味を感じますか?」と何度も確認するようになった。

 格好つけている場合ではない。「相手の時間を大切に!」の意識が染みついてから言動が自然になっていったのだ。

 かつて社長にもかかわらず、「自分の話なんてたくさん社員を集めて聞かせるほどのことか?」と話し方の先生に悩みを吐露したら、「内容に自信がないなら社長を降りろ。聞き手に失礼だ」と叱咤されたことがある。それからそのポジションにいる限り、自分の考える内容に自信を持つこと、ダメなら勝手に周りがクビにしてくれるだろうと割り切ったことが、気持ちの持ち方の転換に大きな影響を与えた。