真実を義務付けることはできない
一体どうしたら陰謀論を阻止できるのか。多くの人はハイテク企業に目を向ける。
フェイスブックは2019年から、1人のユーザーが対話アプリ「ワッツアップ」(フェイスブックの傘下企業)でメッセージを同時に送れる人の数を5人に制限した。
その狙いは、ワッツアップ上での陰謀論の拡散スピードを遅らせることだった。急激な陰謀論の拡散は、インドで大問題になっている。
フェイスブック自体では、デマや虚偽を削除するために1万5000人のモデレーターが働いている。ツイッターは今年1月、Qアノンとつながりがある7万件のアカウントを凍結した。
両社とも、繰り返し有害なデマを拡散する投稿者のアカウントを停止しようとしており、少なくとも投稿者がデマ拡散から利益を得るのを阻止しようとしている。
ユーチューブは2019年、ワクチンに関する誤情報を拡散しているユーザーに広告収入が入るのをブロックした。
もう一つの手法は、陰謀論の虚偽を暴くことだ。前出のカツバ氏が取ったアプローチがこれだ。
同氏は2018年に地元のジャーナリスト2人と一緒にコンゴ・チェックを立ち上げた。エボラ熱の流行に関する誤情報が広まるなか、コンゴ北東部で大量虐殺が繰り広げられていた時のことだ。
米デューク大学のジャーナリズム研究所リポーターズ・ラボによると、こうしたファクトチェックウェブサイトの数は全世界で着実に増加しており、2016年の145から今年の341に増えた。
だが、ファクトチェックサイトが呼び込む読者の数は大抵、陰謀論ファンより少ない。
突き詰めると、当局が信用されていない時に、人は陰謀論を信じる。政治家が陰謀論と戦うためには、透明性がある形で、優れた統治を行う以外に選択肢はほとんどない。
風刺作家のジョナサン・スウィフトは300年前に次のように書いた。
「嘘は飛び、真実はその後をのろのろ追いかける。だから人間がだまされていたことに気づいた時には、もう遅い。おふざけが終わり、作り話の影響が出てしまっている」
最も優れた政府でさえ、陰謀論を打ち負かせないかもしれない。だが、互角の勝負で相手を苦しめることはできるはずだ。