©2021『先生、私の隣に座っていただけませんか?』製作委員会

(髙山 亜紀:映画ライター)

 すっかり世の中に浸透してしまった、「サレ妻(夫)」「シタ妻(夫)」という言葉。一応、説明しておくと、浮気「サレ」た側をサレ妻(夫)、「シタ」側をシタ妻(夫)という不倫用語である。言葉にまるで重みがないが、それほど不倫が身近だということだろう。

 誰もが携帯電話を持ち、簡単に出会ったり、秘かに約束できる現代。不倫は昔よりずっとカジュアルなものになった。それなのに発覚した時の大騒動ときたら。「シタ」側ならまだしも、解せないのはゴシップニュースに見られるように、「サレ」た側も晒し者にされる構図だ。許しても許さなくても、離婚してもしなくても、ことあるごとに掘り起こされ、きっと一生、残るであろう、わだかまり。果たして、「サレ妻」の正解ってあるのか。他人事ながら義憤に駆られていたところ、「これだ!」という作品に出会った。

黒木華演じる「サレ妻」による復讐劇

『先生、私の隣に座っていただけませんか?』はサレ妻vsシタ夫、夫婦の攻防を描いた物語である。シタ夫をじわじわと追い詰めていくサレ妻のやり口に、にやりとせずにはいられない痛快な復讐劇でもある。

 漫画家・佐和子と俊夫は結婚5年目の夫婦。俊夫はもともと佐和子の師匠であったが、いまはアシスタントをして彼女を支えている、表向きはいい夫。ところが連載を抱え、仕事に追われる佐和子の目を盗み、あろうことか、俊夫は彼女の担当編集者、千佳と不倫をしていたのである。

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