鴨緑江を渡り脱北する北朝鮮華僑が増えている(写真:ロイター/アフロ)

 2021年7月、北朝鮮に住む華僑が鴨緑江鉄橋を渡って中国に帰国する事態が発生した。新型コロナウイルス感染症で2年の間、中朝国境が封鎖され、耐え切れなくなった華僑が北朝鮮を出る脱北ラッシュが起きたのだ。

 脱北ラッシュは北朝鮮住民の不法脱北と違い、北朝鮮当局の承認の下で行われた合法的な帰国だ。中朝貿易再開の兆しが見えなくなった華僑らが北朝鮮当局に中国への帰国を要請している。その中に、平安南道成川郡から帰国したワン・ヨンオクという50代半ばの女性華僑がいる。コロナの感染拡大起きる前まで成川郡で一番知られた「金主」華僑だ。ワン・ヨンオクはなぜ突然中国に帰国したのか。

(過去分は以下をご覧ください)
◎「北朝鮮25時」(https://jbpress.ismedia.jp/search?fulltext=%E9%83%AD+%E6%96%87%E5%AE%8C%EF%BC%9A)

(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)

 華僑とは、本国を離れ、海外各地に定着して暮らす中国人である。中国国籍で外国に定住し、本国と政治的、文化的、社会的につながっている。北朝鮮の華僑も同様だ。

 北朝鮮の華僑は大きく4つに分けられる。第一は解放前から北朝鮮地域に住んでいた「元祖華僑」、第二は解放以後に住み始めた「解放華僑」、第三は朝鮮戦争後に定住した「戦争華僑」、第四は中国文化大革命の時期に北朝鮮に不法移住した「文化革命華僑」である。

 解放直後、中華民国と中国共産党の国共内戦が中国共産党の勝利に終わると、北朝鮮の華僑は影響力が大幅に強まった。北朝鮮人民委員会の樹立と北朝鮮華僑連合会の構成が、北朝鮮華僑の政治的、経済的立場を大きく変化させたのだ。

 北朝鮮華僑連合会は華僑の思想教育と北朝鮮政府の政策を宣伝し、華僑が朝鮮人民と同等の権利を持つことを北朝鮮政府に要請した。北朝鮮政府は彼らが北朝鮮社会の一員であることを認め、名目上は北朝鮮住民と同等の権利を与える華僑政策を行ってきた。

 北朝鮮で華僑の実質的な地位と役割が高まったのは1980年代半ばからである。