カブール空港を飛び立つ輸送機(8月24日撮影、写真:Abaca/アフロ)

 約3カ月間はタリバンの攻撃に持ちこたえるとみられていた。

 ところが、アフガン政府軍を主体とするアフガン治安維持部隊は、タリバンの急進撃の前に8月15日にカブール占領を許し、アフガン政府のアシュラフ・ガニー大統領は国外に逃亡、アフガン政権は崩壊した。

 アフガン全土には、約1.5万人の米国人と約5万人の米軍に対するアフガン人協力者およびアフガンの国際治安支援部隊に軍等を派遣していた英独仏はじめ各国の外国人が取り残された。

 カブール空港周辺のタリバン部隊は空港への検問所を支配し、空港内に入り国外に脱出しようとする多数のアフガン人と外国人を追い返している。

 空港周辺では混乱が生じ、8月23日にはアフガンの首都のカブール空港でアフガン治安部隊と正体不明の武装勢力の間に銃撃戦が発生したと報じられている。

 なぜこのような事態に至ったのか、その影響はどうなるのかについて、現在判明している諸状況から考察する。

統治困難な「帝国の墓場」アフガン

 アフガンは「帝国の墓場」とも言われる。

 古来、アレキサンダー大王、モンゴル帝国、チムール大王、大英帝国、ソ連などが介入し、長期の武装抵抗に悩まされ結局撤退を余儀なくされたという歴史がある。

 今回は米国がその轍を踏んでしまった。

 アフガンはユーラシア大陸のハートランドとも言える戦略要域でもある。

 世界の屋根と言われるパミール高原から西に流れるヒンズークシ山脈により南北に分断された、内陸の山岳国家であるが、その部族と宗派は複雑に入り組み部族間の争いが絶えない。

 外敵が侵略して来れば果敢なゲリラ戦を執拗に続け追い出す頑強さを持つ半面、外敵が撤退すると部族間の武力闘争が起きるのが常である。

 もともと交通の要衝にあるものの、道路網は限られ国土の大半は高度数千メートルの山岳地帯である。その面積は約65.2万平方キロメートルと、日本の約2倍の比較的広大な国土面積を占めている。

 人口約3890万人の民族構成は極めて複雑である。

 最大数を占めるのは、パシュトゥン人である。彼らは、パキスタン北西部のペシャワールなどを中心とする地域にも居住する民族だが、英国の恣意的な国境線の線引きにより、2つの国に分断されてしまった。

 他方のヒンズークシ山脈以北の北部は、トルクメニスタン、ウズベキスタンなどのトルコ系諸国およびイラン系のタジキスタンと国境を接し、これらの諸民族が居住している。

 これらの部族は同一国家でありながら、パシュトゥン人とは対立関係にあり、国家統一を困難にする一因になっている。