(英フィナンシャル・タイムズ紙 2021年8月11日付)

インフレは本当にコントロールできているのだろうか

 金融市場は「ゴルディロックス」の存在を信じている。

 今年の年初から5月までインフレ圧力をかなり懸念していた市場は今、向こう数年間の物価上昇率が米国やその他の先進国では高すぎもせず低すぎもしないレベルに収まるとの見方で一致している。

 普通の米国債10年物と同年限の物価連動国債の利回り格差は2%を少し超えたところで落ち着き、向こう10年間のインフレ率が平均で年2%強にとどまることを示唆している。

 おとぎ話の主人公ゴルディロックスなら、高圧経済が雇用の高い伸びと金融政策の緩やかな正常化を維持できる「ちょうどいい」水準だと言うだろう。

 だが、現実の世界はおとぎ話の世界よりも厄介だ。

 第2四半期のインフレ率はまさに数十年ぶりの水準だった。

 米国では、物価変動の激しい食品とエネルギーを除いたコアインフレ率が年率換算で8.1%に達し、1982年以降のどの四半期の値をも上回った。

 経済協力開発機構(OECD)加盟国でも第2四半期のインフレ率が1995年以来の高さになり、インフレをあれほど怖がっているドイツでさえ、年率換算のインフレ率が1990年代前半の東西ドイツ統合後の好景気以来の高率になっている。

日本とユーロ圏には当てはまっても・・・

 中央銀行の幹部たちは、心配することはほとんどないとしている。

 インフレ率の上昇は「一時的なもの」だとし、新型コロナウイルスの危機から力強い景気回復を遂げるには金融緩和がまだ必要だと述べている。

 中銀は、金融引き締めが少し遅れるリスクよりも、引き締めのタイミングが早すぎて景気が冷え込むリスクの方が問題だと考えているのだ。

 日本とユーロ圏については、この見立ては十分に根拠があるように思える。どちらの経済も、過去10年にわたってしつこい低インフレに悩まされているからだ。