(写真:ロイター/アフロ)

(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長)

8代目CEO、パット・ゲルシンガーの手腕

 半導体の最先端の微細化を牽引してきたインテル(Intel)は、2016年に14nmから10nmに進むことができず、台湾TSMCや韓国サムスン(Samsung)にその盟主の座を奪われることになった。

 また、2016年第3四半期に最大82.5%あったインテルのプロセッサの市場シェアは、2018年以降にTSMCの最先端プロセス7nmに生産委託している米AMDの猛追を受けており、2021年第2四半期には、インテルが55.8%、AMDが44.1%と、その差は僅か11.8%まで縮まっている(図1)。

図1 インテルとAMDのプロセッサのシェアの推移
出所:https://www.cpubenchmark.net/market_share.html

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 このように、2016年以降、精彩を欠いていたインテルでは、今年2021年1月13日、7代目CEOのボブ・スワン(Bob Swan)が辞任を発表し、翌月の2月15日にパット・ゲルシンガー(Pat Gelsinger)が8代目CEOに就任した。

 ゲルシンガーCEOは、3月23日に、今後の経営方針とする「Intel Unleashed: Engineering the Future」を発表した。その概要は次の通りである。

(1)7nmの開発を2021年第2四半期から開始し、2023年に量産する。

(2)「IDM2.0」と名付けた戦略により、垂直統合型のIDM(Integrated Device Manufacturer)を維持・拡大するとともに、ファンドリー(半導体受託製造)事業を開始する。

(3)200億米ドルを投じてアリゾナ州にCPU用とファンドリー用の2つの半導体工場を建設する。

(4)IBMと先端半導体の研究開発で協業する。

 そして、ファンドリー事業を実現するべく、米国のGLOBALFOUNDRIES(GF)を約300億米ドルで買収しようと交渉していることが明らかになった(7月15日「IntelがGF買収で交渉か、WSJが報道」EETimes Japan)。