(英フィナンシャル・タイムズ紙 2021年7月23日付)

ジョー・バイデン大統領の就任直後の6カ月間は劇的な展開だった。
米国民の3分の2が新型コロナウイルスのワクチンを少なくとも1回接種した。経済は1980年代以来の急成長を謳歌している。
そして、ドナルド・トランプ大統領時代には世界が米国に不安や哀れみの視線を注いでいたが、世論調査が示すように、今ではそれもなくなった。
バイデン政権の滑り出しは、ほとんどの米国民が生まれて初めて目にする最高の出来栄えとなっている。
しかし、政治の世界ではこうした展開は例外的だ。
バイデン氏がこれから直面する苦難――自らの改革法案の大半が停滞していること、新型コロナの感染がなかなか収まらないこと、殺人発生率の上昇や正式な手続きを経ずに国境を超えて入ってくる人々への懸念があることなど――は概ね、バイデン氏の力が及ばない問題だ。
忘れがちだが、今年1月のジョージア州の決選投票で民主党の候補者が勝利し、上院の主導権を民主党が握るまでは、バイデン氏はレームダックになるかに見えた。
もっとひどい事態になっていた可能性もあったのだ。
アフガニスタン撤退の不思議
ただバイデン氏は大統領として、これまでよりもかなり厳しい局面に入ろうとしている。問題の一つは、自ら犯した失策、すなわちアフガニスタンからの撤退に起因する。
バイデン氏が、2500人という最小限の兵力を引き揚げなければならないと思ったのはなぜか、しかも米国の同時多発テロ20周年となる今年9月11日までに撤収しなければならないと思ったのはなぜなのか、理解に苦しむ。
部隊駐留のコストはわずかだ。アフガニスタンでは過去17カ月間、戦闘で命を落とす米兵は一人も出ていない。
対照的に、アフガニスタン撤退に伴うリスクは甚大だ。