香港の工事現場から鉄条網越しに見える「国際金融中心・第二期」(Two IFC)(資料写真、写真:ロイター/アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

「香港国家安全維持法」(国安法)によって、香港がいよいよ「白色テロ」(反政府運動や革命運動に対する厳しい弾圧)の時代に入った。

「リンゴ日報(蘋果日報)」が発行停止に追い込まれたのち、次に起こったのが全区議会議員に対する忠誠宣誓への署名要求だった。先週末で少なくとも214人の区議がこの署名に反対して辞職した。

 2021年5月に香港立法会で可決された公職条例に基づき、区議を含む全公職者は香港基本法の遵守と香港政府への忠誠の宣誓に署名することが求められ、それを拒否した場合は議員資格を剥奪され、議員報酬の返納を求められることになった。議員たちには7月下旬から署名を求められる予定だが、「その前に辞職すれば2020年1月以降の議員報酬(100万香港ドル相当)の返納義務は避けられる」と一部メディアが7月6日に報じたため、辞職ラッシュが起きていた。

 2019年11月の区議選挙では、全18区479議席中、直接選挙枠452議席の8割超の389議席を民主派が獲得して圧勝した。だが、2020年7月の民主派による「予備選挙」に参与したり、事務所に「光復香港、時代革命」といった反送中デモのスローガンを掲示したりしている区議は、それだけで香港政府に忠誠をもっていないとして議員資格を剥奪されるとみられており、その数は少なくとも230人に上るという。すでにそのほとんどが辞職したことになる。

 香港市民が選んだ区議に対し、「議員報酬」を人質にとって辞職を迫る「恫喝」のようなやり方は、一種の政治迫害だ。香港政府の要求する忠誠とは、公務員の義務としての当然の忠誠ではなく、香港政府や中国の圧政や不条理、錯誤にも目をつぶって隷属することを意味するもので、有権者、市民の利益のために働くという英国統治下から続く公僕の定義を大きく逸脱するものだろう。

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 こうした政治迫害ともいえる忠誠要求は、公職者に対してだけでなくメディア従事者、大学職員にまで拡大している。