7月1日、中国共産党結党100周年記念式典が行われた天安門広場は降雨もなく、後半は晴れ間が垣間見えた。事前に雨雲を消す「人工降雨」技術が使用されたという(写真:新華社/アフロ)

(ジャーナリスト 吉村 剛史)

 雨や雪を意のままに降らせ、特定の地域・日時を晴天にする――。近年の中国の気象改変技術の躍進は目覚ましいが、同時に近隣国・地域への気象や環境への影響の有無も懸念されている。

 中国国務院は2020年12月、各省庁と地方政府に対し、人工降雨などの気象改変プログラムの実施対象地域を2025年までに550万平方キロメートルに拡大するという政策方針を示した。これは中国全土の57%に相当し、インドの総面積の1.5倍以上に相当する広大さで世界最大規模だ。

 だが、これによる地球規模の気象、環境に対する影響について日本社会の関心は低く、関係省庁での研究も進んでいない。2008年の北京五輪開会式当日を、事前の人工降雨で晴天にしたことで知られる中国に対し、東京五輪開会式や開会期間中の荒天に対する日本の備えは果たして万全だろうか。

7月1日式典は「人工晴天」

 中国共産党100周年記念式典が開かれた今年7月1日の北京・天安門広場。この日は降雨が予想されていたことから、中国当局は式前夜と、当日早朝、上空の積乱雲に向けて数百発の降雨ロケットを打ち上げたという。降雨を早めることによって、式典開会中の降雨を避けるのが狙いで、実際に式典の最後のころには晴れ間も広がっていった。