急速に拡大が広がりつつある韓国。ワクチン接種で気が緩んだ面は否定できない(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 やはり規制緩和というアメをぶら下げてワクチン接種を急いだことが凶と出たのだろうか。

 韓国における新型コロナの新規感染者の増加ペースが止まらない。韓国の1日当たりの新規感染者は半年ぶりに1000人の大台を突破した。最近の発表では、7月6日の感染者数は1212人で、これは過去2番目に多い数字だ。今も連日、感染者数を更新している。

 地域別に新規感染者数の推移を見ると、ソウルと首都圏にあたる京畿道(キョンギド)が950人と突出しており、約80%近くを占める。この他、釜山や済州島といった地域でも増加傾向が続いている、ワクチン接種は進んでいるものの、都市間の移動や観光地に向かう人の流れが今回の増加に繋がっているものと見られる。

 今回は新規感染者数の多くが20~30代の若年層であり、特に酒場やナイトクラブ、カラオケといった遊興施設での集団感染が多いと言われている。また、日本と同様に「外飲み」が問題視されていた矢先の感染増だった。

 日本も現在、東京を中心に新規感染者の増加が目立っており、東京に4度目の緊急事態宣言が出された。日本も韓国も、都市部の人口規模や人の流れが類似しており、流行の時期やペースも重なっている感がある。繰り返される自粛や制限に、それぞれの国民がうんざりしている点も変わらない。

 厄介なのは、感染力の強いデルタ株による感染が目立ってきていることだ。飲食店の営業時間や会食における人数制限などは段階的に緩和されていたが、ソウル市とその周辺の自治体では、こういった規制緩和の延期と再度の規制強化を発表している。文在寅大統領も「(飲食店など)防疫を違反した場合には10日間の営業停止など罰則を強化する」と述べ、関係閣僚に対策を指示した。

 また、ソウルとその周辺の首都圏では、12日から警戒レベルをこれまでの最高値である4段階にすると決めた。これによって、飲食店や商業施設、遊興施設では営業時間の大幅な短縮や制限を実施しなければならなくなった他、企業も出張の自粛や在宅勤務に対応する必要性が生じた。学校も1学期の終業式まではオンライン授業である。夏休みを前に、経済活動の活性化に期待していた事業者の落胆は大きい。

 ただ今回の感染拡大は、最近の人々の気の緩みを見ていれば必然的であったように感じる。

 韓国ではこの数カ月、ワクチン接種に力を入れていた。ただ、当初は当日になって接種をキャンセルする人が目立ったり、欧州に端を発した英アストラゼネカの血栓リスクが報道されたりしたため、ワクチンの接種率は低調に推移していた。

 そこで苦肉の策として、政府は残余ワクチンを接種するために年齢制限を撤廃した上、接種を終えた人に対して特典を与えるという方針を打ち出した。特典とは、接種証明の発行、マスク未着用の許可、公共施設やレストラン、ホテルなどの割引などである。

 すると、予想以上に希望者が殺到。余っていたアストラゼネカや米ヤンセンファーマのワクチン在庫は払底した。