ワクチン接種を推進する米国のオースティン国防長官

(北村 淳:軍事社会学者)

 アメリカ陸軍当局は9月1日からCOVID-19(新型コロナ感染症)ワクチン接種を義務化することを決定した。空軍や海軍それに退役軍人省などにおいてもワクチン接種義務化へ向けての検討が開始されているという。

 だが、このような動きに対して一部の軍関係者からは、「陸軍首脳および統合参謀本部議長(アメリカ軍人のトップ)であるミレー陸軍大将たちがバイデン政権に“忖度”した政治的な強制命令ではないか?」という反対意見が聞こえてきている。

集団免疫の獲得まではほど遠い状況

 バイデン政権は発足当初、2021年7月4日(米国独立記念日)までにワクチンの接種によってアメリカ社会が集団免疫を獲得し、新型コロナウイルス感染が終息することを目標にした。実際に、ワクチン接種が開始されて数カ月間、3月頃までの接種人数は順調に増加していった。

 しかし4月になると、様々な変異種の出現などによって、集団免疫を獲得するにはウイルスの進化よりも速いスピードで、アメリカの総人口の80~85%の人々にワクチンを打ちまくらなければならないという予測が示され、集団免疫の獲得は極めて厳しい状況になってしまった。