(英フィナンシャル・タイムズ紙 2021年7月2日付)

オートマティック・スタビライザーを組み込んでおくことは米国経済にとって価値あることかもしれない

 経済学者やエコノミストが自分自身を疑うことの美徳について説教することは、そうそうない。ノーベル賞受賞者だったり、米政府の政策立案者だったりした場合は特にそうだ。

 しかし、この6月末、ロバート・ルービン(元米財務長官)、ピーター・オルザグ(元行政管理予算局長)、ジョセフ・スティグリッツ(ノーベル賞を受賞した経済学者)の3氏が、まさにそれをやった。

不確実性を反映した政策を

 具体的に言えば、3氏は今年共著した論文に基づく米アスペン研究所の討論会で、将来を予想する時には「ふんだんな謙虚さ」を発揮するようエコノミストらに呼びかけた。

 また政策立案者に対しては、この不確実性を認めることに対応して、「オートマチック・スタビライザー(自動安定化装置)」に基づく「半ば自律的な裁量財政構造」の概念を取り込むため、財政プロセスを全面的に見直すよう迫った。

 これは、条件が予想外に変わった時――つまり、エコノミストの予想が外れた時――には、一部の財政プログラムは自動的に調整されるべきだという考えを指す。

 この仕組みは、上述したような予想と果てしない政治的な駆け引きを経て、予算が毎年定められる現在の米国の制度とは異なる。

「もし経済で実際に(リアルタイムで)起きていることに対して自動的に予算を調整できれば、より良い状況に行き着くかもしれない」とオルザグ氏は述べた。

 さらに、例えば失業保険にオートマチック・スタビライザーを使えば、政治的な駆け引きではなく、具体的な失業パターンによって支援が拡充されたり削減されたりすると指摘した。

実現の見込みは薄くても議論すべき理由

 では、こうした提案が通る可能性が果たしてあるのか。近く受け入れられることはない。

 バイデン政権は現在、まさに半自律的な財政裁量が対処することになっているタイプの論争に巻き込まれている。

 すなわち、足元の景気回復を考えると、以前合意された失業手当のパッケージが過度に手厚いかどうか、という問題だ。