(英フィナンシャル・タイムズ紙 2021年6月25日付)

新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから1年半の間に浮かび上がった明確なパターンは、一見確実なことが現実の出来事によって次々とひっくり返されていくことだ。
最近では西側――ここでは主に米国と西欧を指す――がパンデミックを経て普通の状態に戻りつつある。しかし、戻れる保証は全くない。
ワクチンの接種率が伸び悩み、集団免疫を獲得する目標の達成が文化的な理由による接種拒否に阻まれている。2歩進んでは1歩下がる状況だ。
懸念されるのは、新しい変異株が登場し、未接種の人々を減らす西側の能力を上回るペースで増えてしまう事態だ。
先行した欧米諸国で伸び悩むワクチン接種
新しい変異株はすでに、7月4日の独立記念日までに成人の70%にワクチン接種を行うというジョー・バイデン大統領の目標を達成不可能にしてしまっている。
大統領が自ら掲げた目標をクリアできない最初のケースだ。
ホワイトハウスは、この目標は数週間遅れで達成されるだろうと話している。だが、そのためには大統領や各州政府が文化戦争の激化を恐れてこれまで避けてきた施策を講じざるを得なくなるかもしれない。
例えば、9月の新学期が始まる前にワクチン接種を受けるよう児童・生徒に義務付けることなどだ。
同様な困難はほとんどの欧州諸国の行く手にも待ち受けている。ワクチン接種で出遅れた国が先行していた国に追いつきつつあるのは、後者の接種率が伸び悩んでいるせいでもある。
西側が次の冬に再びシャットダウンを強いられるリスクを軽く見るべきではない。各国政府は2つの大きな困難に直面している。