崩壊を予想してきた西側諸国の当惑

 西側の人々は何年も前から、中国の共産主義の崩壊を予想する理由を数多く見つけてきた。

 曰く、一党独裁国家で必要になる統制と、現代経済で必要になる自由とが相容れるはずがない。

 曰く、中国の経済成長はいずれ息切れして幻滅と抵抗が始まるに違いない。

 仮にそうならなくても、経済成長で生まれた巨大な中間層が自由の拡大を要求することは避けられないだろう。

 何と言っても、中間層の子供たちの多くは西側で教育を受け、民主主義を直接見聞きしてきたのだから――。

 これらの予言をした人々は、中国共産党の人気が続いていることに当惑している。多くの中国国民は、自分たちの暮らし向きが良くなったのは共産党のおかげだと思っている。

 確かに中国では労働力人口の高齢化が進み、その規模も縮小している。馬鹿馬鹿しいほど早く引退する制度にも慣れてしまっている。

 しかし、これらは権威主義国家か否かに関係なく、どこの国の政府も直面する問題だ。活発な経済成長はまだしばらく続くように見える。

 中国には、共産党の強硬な手法を称賛する人も多い。

 西側がまだもたついているのに、新型コロナウイルス感染症をこんなに早くに潰し、景気を活発にしたではないか、というわけだ。

 また、中国が世界における重みと誇りを取り戻したとの考え方にも喜びを感じている。この考え方は、共産党が煽るナショナリズムに沿ったものだ。

 国営メディアは、共産党と国家とその文化を混ぜ合わせて伝える一方、米国は人種暴動と銃撃事件の国だと誇張し、一党支配でなくなればカオス(混沌)になると示唆している。

 異論が出れば、習氏はそれが大きくなる前に技術を使って対処する。

 中国の街中には監視カメラがあちこちに設けられており、顔認識ソフトウエアがその威力を引き上げている。ソーシャルメディアでのやりとりはのぞき見され、検閲される。

 政府当局は問題を早期に解決したり、問題を提起した市民を迫害したりできる。よからぬ思想を共有すれば、職や自由を失うこともある。

 中国共産党の成功は、容赦ない抑圧という恐ろしい代償によって得られている。