「Xファイル」に翻弄される尹錫悦・前検事総長(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 韓国の次期大統領候補として最も有力視されている尹錫悦(ユン・ソクヨル)元検事総長に関わる疑惑が記された「怪文書」の出現に、韓国政界が激しく揺れている。いわゆる「尹錫悦Xファイル」と呼ばれるこの怪文書の出どころをめぐって、与党「共に民主党」と最大野党「国民の力」とは連日舌戦を続けている。

「深刻」「20件の疑惑」とされるも中身不明のXファイル

 尹錫悦前検事総長は「29日午後に、今後、私が歩んでいく道について国民にお話しする」としており、ここで正式に大統領選の出馬表明をすると見られている。現在はどの政党にも属していない尹氏だが、大統領選に向けて、保守系政党で最大野党「国民の力」への入党が有力視されている。それが実現すれば、与党「共に民主党」には大きな脅威となる。

 そこに降って湧いたのがこの「Xファイル」騒動だ。

 尹錫悦前総長の怪文書について、初めて公に言及したのは、皮肉にも保守政界の人物だった。新韓国党(現・国民の力)出身で、長い間、金武星(キム・ムソン)元議員の補佐官を務めてきた保守派の政治評論家のチャン・ソンチョル氏は、6月19日、自身のフェイスブックに「先日、尹前総長と妻、義母の疑惑が整理された一部の文書化されたファイルを入手した」と書き込んだ。チャン氏は文書の内容については具体的に言及しなかったものの、「尹前総長に大きな期待を寄せてきたが、こうした疑惑が持たれている方が国民に選択されるのは、とても難しいというのが苦心の末に下した結論」と断言した。ここから、尹前総長の「Xファイル」が韓国メディアで一躍、注目の的となった。