韓国ソウルで開催されるクィアパレード。写真は2018年のパレード(写真:Penta Press/アフロ)

楊 虔豪 (ソウル在住の台湾ジャーナリスト)

 毎年6月は「ゲイ・プライド」(LGBTプライド・PRIDE MONTH)で、夏が近づくこの時期、韓国ソウルではクィア・パレードが開催される。クィアはゲイ、レズビアン、トランスジェンダーなど性的マイノリティの総称だ。新型コロナウイルスの影響で、昨年の祭りは中止になった。今年はオンラインで行われる。

 この1年余りの間、韓国の性的マイノリティは苦しんできた。2020年5月、ソウル・梨泰院にある複数のゲイバーで新型コロナウイルス感染が拡散し、225人の感染者が確認されたからだ。

「ゲイバー」が記事の見出しに登場するや否や、同性愛者が批判の対象になり、多くの韓国キリスト教会が同性愛者を批判した。さらに、感染拡大が深刻化すると、反同性愛を掲げるキリスト教団体が、感染者の身分と移動経路の公開を要求した。

 しかし、性的マイノリティに対する批判は逆の効果を産み出した。主要メディアやキリスト教団体が性的マイノリティを批判した結果、世間の目を恐れた同性愛者が影に隠れ、検査を忌避したことでさらに感染がさらに広がったのだ。

 当時、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長は、検査の際に電話番号や住所だけを記入して他の個人情報は公開しない「匿名検査」を実施した。身バレを恐れた人々が検査を受けるようなったことで、梨泰院のゲイバーやナイトクラブの感染はすぐに鎮まり、匿名検査が全国に拡大された。

 皮肉なことに、キリスト教団体や反同性愛団体は、同性愛者を批判しながら自分たちは政府の勧告に従わずに礼拝や集会を強行したため、多くのキリスト教会で集団感染が発生している。