これ以降、ホストを務めた都市が利益を得たケースはほとんどない。競技施設や交通網の整備に多額の資金を投じているからだ。
企業スポンサーも、自分たちがどの程度の金銭的利益を得ているのか、正確には把握していない。それでも、大会の度に名乗りを上げているのだから、スポンサーになる価値があると感じているに違いない。
確かに、スポンサーになれば自社ブランドを見せつけ、新製品を世界中の視聴者に売り込むことができる(2016年のリオデジャネイロ大会には、32億人がテレビのチャンネルを合わせた)。
そして、世界的に称えられている五輪のマークが自社ブランドと関連付けられることになる。
記録を塗り替える東京大会
スポーツ・エコノミストのアンドリュー・ジンバリスト氏によれば、今回の東京大会では主催者側がこうした利点を喧伝し、日本国内のスポンサーに対しては、1964年の東京大会が戦後日本の「お披露目パーティー」になったのとまさに同じように、数十年に及ぶ経済低迷からの日本の復活を祝う舞台に上がるチャンスだと訴えた。
今回の東京大会では、国内企業がほとんどを占める「パートナー」47社から30億ドルを超える資金が調達された。
これまでのオリンピック記録の2倍を上回る額だ。
複数大会での協力を約束しているコカ・コーラやビザ、エアビーアンドビーといったIOCの「トップ」スポンサー14社からも5億ドル前後を手に入れる。
企業の関与は、その企業自身にリスクをもたらすのが常だ。
リオデジャネイロ大会を振り返れば、スポーツの栄誉だけでなく、犯罪、高額な維持費がかかる施設群、ジカ熱ウイルスなどが思い出されるだろう。
しかし、メガ・イベントの崩壊となれば話は別だ。スポーツ界では前例がほとんどない。
クリケットのスーパー・シリーズが2009年、主催者のアレン・スタンフォードがポンジ・スキームと呼ばれる金融詐欺の容疑で告発されたことを受けて取りやめになったことがあったが、あれとは比べものにならない(クリケット・ファンには申し訳ないが)。