G7サミットで英国を訪れたバイデン大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 6月11日から3日間にわたり、主要7カ国首脳会議(G7サミット)が英国はコーンウォールのカービスベイで開かれた。この席上でG7首脳は、中国が掲げる「一帯一路」構想の対抗策として、Build Back Better World、略称B3Wという途上国向けインフラ支援構想を打ち上げ、その実現に向けて協力していくことで合意に達した。

「一帯一路」構想に基づいて途上国に対して行われる開発支援に関しては、かねてよりその不透明性を問題視する声が先進国から上がっていた。不当な条件で多額の投融資を受けた途上国の中には、いわゆる「債務の罠(debt trap)」に陥った国も少なくないと言われている。スリランカのハンバントタ港は、その象徴的なケースだ。

スリランカのハンバントタ港。「一帯一路」構想に基づく開発支援で造られたが、返済不能に陥り、99年間にわたり中国企業にリースされることになった。中国による「債務の罠」の典型(写真:新華社/アフロ)

 Build Back Better Worldという名前が示すように、この構想には米国のバイデン大統領の意向が強く反映されている。投融資の透明性の確保はもちろんのこと、人権や民主主義のみならず、環境にも配慮した開発支援を行う。それがバイデン大統領の志向するG7版「一帯一路」構想というわけだ。いかにも綺麗なストーリーである。

 このG7版「一帯一路」であるB3Wに期待する声も上がっているようだが、正直言って、この構想は本家である中国の「一帯一路」以上に機能しないのではないだろうか。そしてそのことを、バイデン大統領自身が理解していると考えられる。結局バイデン大統領は、単なる政治的なアピールとしてこの構想を打ち出したに過ぎないのではないか。