(英フィナンシャル・タイムズ紙 2021年6月11日付)

高額所得者が有利になるように複雑に“仕組まれた”税制を変えることは容易ではない

 爆弾が落ちてきても草花が揺れる程度の衝撃しかないことが時折ある。

 先日、米国で最も裕福な25人がいかにわずかな税金しか納めていないかを暴いた非営利報道組織プロパブリカのリーク報道は、ドラマチックであると同時に、ある程度予想された内容でもあった。

 年によっては、マイケル・ブルームバーグ氏やテスラの創業者イーロン・マスク氏のような億万長者の納税額が平均的な米国人のそれを下回っていた。

 だが、そんなことは我々も何となく分かっていた。

 もし米国の税制が公正で透明性も高いとまだ思っている米国人がいたら、米アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス氏が7月に予定している有人宇宙飛行の席を予約するべきだろう。

お金持ち本人のイデオロギーに意味なし

 とはいえ、匿名の人物からプロパブリカにリークされたこの情報は、この問題を主に2つの点で前進させた。

 1つ目は、お金持ち本人のイデオロギーが重要でないことを明確にし、人々にはっきり理解させたことだ。

 左派は、多彩な慈善事業で知られるジョージ・ソロス氏を礼賛する一方でマスク氏を罵るかもしれないが、会計士たちは誰に雇われていようと同じ計算結果を出す。

 自分は税金をもっと多く納めるべきだと億万長者が思っているかどうかはこの際関係ない。回避できる税は回避する。

 著名投資家のウォーレン・バフェット氏は何年も前に、自分よりも自分の秘書の方が所得税を多く納めていると指摘した。

 その現実を変えるために同氏が何かしたかと言えば、何もしていない。