イラク南部のバスラ油田。2017年1月撮影(写真:ロイター/アフロ)

(篠原 信:農業研究者)

 農林水産省が、化学肥料からの脱却と、有機農業への推進に本腰を入れ始めた。令和3年5月、農林水産省は「みどりの食料システム戦略」を策定した。

 とある農業系SNSでは、この戦略に懐疑的な見方をする人が多かった。とても本気とは思えない、また一時的な打ち上げ花火ではないか、と。

 というのも、つい最近も大きく打ち上げたものの尻すぼみに終わった事例があるからだ。

「選手村で有機野菜提供」は絵に描いた餅に

 東京五輪招致が決まった当初、選手村で提供する青果はすべて有機農産物とする話が出た。ところが日本における有機農業の普及率は全耕地面積のわずか0.2%(2018年時点、『有機農業をめぐる事情』農林水産省、令和2年9月)。とても選手村での消費量は賄えないとして、話が立ち消えになった経緯があった。

 有機農家は、ようやく風が吹いてきた、と思ったところで空振りに終わり、落胆した。

 ただ、今回はどうも様子が違う、と私は感じている。緑の食料システム戦略は、有機農業の推進というよりも、化学肥料への依存度を下げることに主眼を置いている印象を受けたからだ。