韓国の最大野党「国民の力」代表に当選した李俊錫氏(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 6月11日に行われた、韓国の野党第一党「国民の力」の代表選挙で、実業家の李俊錫(イ・ジュンソク)前最高委員が当選した。有力政党の代表としては史上最年少の36歳である。李氏は、国会議員に3度立候補したがいずれも落選している。つまり国会議員の経験がない代表の誕生となった。李代表の選出は古い体質として人気の上がらなかった「国民の力」のイメージを大いに変えることになった。

 他方、保守・中道の次期大統領候補として先頭を走ってきた尹錫悦(ユン・ソクヨル)前検事総長に対し、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)が職権乱用容疑で捜査に着手したことが明らかになった。尹総長は、次期大統領候補の支持率調査で与党系の3人の候補を大きく引き離し始めた。これまで沈黙してきたが、最近では事実上の大統領候補として公の活動を始めた。このタイミングで捜査を始めたことに対し、大統領候補への妨害活動だとの指摘も出ている。

 フレッシュな代表をいただくことで人気が高まってきた「国民の力」と、大統領候補として先頭に立つ尹錫悦氏が連携すれば、次期大統領選に向けた与党の戦略に大きな脅威となっていく。その機先を制しようという文在寅政権と与党の動きがすでに始まり、選挙に向けた運動が本格化したと見てよいだろう。

5月30日、ソウルで開催された環境問題を扱う国際会議「P4Gサミット」での文在寅大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

下馬評を覆した李俊錫の当選

 李俊錫氏は党代表の予備選挙の段階で、羅卿媛(ナ・ギョンウォン)前院内代表、朱豪英(チュ・ホヨン)前代表代行を破って大差で1位となっていた。先月26~27日に行われたこの予備選挙は、世論調査会社2社がそれぞれ一般市民1000人と党員選挙人団1000人を対象に実施し、一般市民と党員の票を50:50で合算して候補者を絞り込むものだ。そこで李俊錫候補は、民心(一般市民)で圧倒的1位、党心(党員投票)でも2位となり、全体で41%を獲得、次点の羅卿媛氏29%を12ポイント上回った。