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(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 原油市場を強気ムードが支配し始めている。米WTI原油先物価格は6月8日に終値で1バレル=70ドルを上回った。2年8カ月ぶりの高値である。米国で新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、今年の夏は旅行を楽しむ人が増加してガソリン需要が拡大するとの見方が広がっているからである。

 国土の広い米国では自動車は日常生活に欠かせない移動手段である。ガソリン消費量は日本の原油需要(日量約330万バレル)の3倍に近い。米エネルギー省によれば、直近のガソリン需要は日量916万バレルとなったが、900万バレル超えは米国全体が都市封鎖となった昨年(2020年)春以降初めてである。

 世界最大規模を誇る米国のガソリン市場は5月、石油パイプラインへのサイバー攻撃で大混乱した。ガソリン価格は1ガロン当たり3ドルを超え2014年10月以来の高値となり、この状態が現在も続いている。ガソリンを運ぶタンクローリーの運転手不足やインフラ施設の老朽化から、ガソリン価格はさらに上昇する可能性がある。

8月以降の方針が立てられないOPECプラス

 国際エネルギー機関(IEA)は世界の原油需要について「2023年まで新型コロナウイルスのパンデミック以前の水準に戻らない」との見方を今年3月に示していたが、最近になって「今後1年でコロナ禍以前の水準に回復する可能性がある」と修正している。