菅義偉首相。6月1日参議院厚生労働委員会で(写真:つのだよしお/アフロ)

 新型コロナウイルスワクチンの接種スピードが上がっている。総務省は6月2日、高齢者への接種が7月末までに終わると回答した自治体が98.7%に上ったと発表した。わずか1カ月前、自治体窓口への予約殺到など、さまざまなトラブルが起こっていたが、行政実務をこなすフェーズに入ればそれほど心配はない。菅義偉首相はコロナ対策に手ごたえを感じ始めているようで、今秋に行われる衆院選での「勝利」にも自信をのぞかせているという。

「コロナ対策」以外の政策にも邁進する首相

「例の件、進みましたので」

 6月初旬、ある業界団体の幹部の携帯電話が鳴った。菅首相からの着信だった。懸案だった業界の政策案件について、前向きな報告があったというのだ。産業政策について、菅首相が団体幹部や経営者らと直接電話でやり取りすることは珍しくない。

 菅首相は現在、月内発表予定の「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針)に強い関心を寄せている。自ら内容面の詳細な確認も行っているという。

 コロナ後を見据えた「グリーン成長戦略」の仕込みにも余念がない。首相官邸ホームページには「グリーン社会の実現」「2050年カーボンニュートラル」「政府が環境投資で大胆な一歩を踏み出します」との言葉が躍る。

 6月11日から始まるG7サミット(主要7カ国首脳会議)でも、コロナや五輪だけでなく、安全保障についても積極的に取り上げる見通しだ。コロナ対応だけで消耗しているかと思いきや、そういうわけではないようだ。