コロナ後の民需の急減による純貯蓄の増加が政府の財政赤字をファイナンスしている。写真はシャッター街と化した大阪・新世界(写真:アフロ)

 2020年度の実質GDPは前年度比▲4.6%となり、2年連続のマイナス成長へ陥った。落ち込み幅は、リーマン・ショックのあった2008年度の▲3.6%を超えて戦後最大である。2020年度の日本経済を振り返れば、新型コロナウィルスの感染拡大を抑えるため、急激な縮小を余儀なくされた。コロナ禍対策のため公的需要が拡大したものの、個人消費など民間需要や輸出の急激な縮小を補うには至らなかったということだ。

 一国の経済全体を示す指標としてはGDPが有名かつ重要だが、経常収支も隠れた重要指標に位置付けられる。経常収支とは、海外との財貨・サービスの取引や所得の受け払い等を記録した統計で、資金の受け取りが大きければ黒字、支払いが大きければ赤字になる。

 実は、経常収支は戦後最大の減少率を記録した実質GDPとは異なり、意外にも大きく変化しなかった。2020年度の経常収支は18.2兆円の黒字で、2019年度の18.9兆円からほぼ横ばいだ。

 2020年春の1回目の緊急事態宣言では、自動車メーカーなど多くの製造業者が工場の稼働縮小や生産停止に踏み切ったため、輸出規模が縮小した。そのため、2020年度の経常収支が前年度からほぼ変わらなかったことに違和感を持たれるかもしれない。だが、2020年度は輸出額の減少と同時に、輸入も大幅に減少している。

 内訳をもう少し細かく見ると、内需低迷に原油価格急落の影響も重なったため、輸入額の減少幅の方が大きくなり、貿易黒字はむしろ拡大した。他方、インバウンド需要の消失によりサービス収支の赤字が拡大、貿易黒字の拡大と相殺し合ったため、全体では経常黒字が小動きにとどまったのだ。