アマゾン ロゴ(写真:AP/アフロ)

 米アマゾン・ドット・コムの電子商取引(EC)の商慣行を巡り、米首都ワシントンのラシーン司法長官が反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで同社を提訴した。外部の業者が出品する同社のマーケットプレイスで他のサイトよりも安く売るよう指示し、価格を拘束したとしている。米ウォール・ストリート・ジャーナル米CNBCなどの米メディアが5月25日に報じた。

アマゾンの「公正価格規定」とは

 訴状によると、アマゾンは過去に米国の業者に対し、アマゾンのサイトでの価格よりも安く他のサイトで売ることなどを禁じていた。2019年3月この規定を撤廃し、新たな「公正価格規定」を設けた。だが、ラシーン司法長官は事実上旧規定と同じ内容だと指摘している。

 アマゾンの「公正価格規定」では、出品業者は価格を自由に決めることができる。一方でアマゾンは他のウェブサイトをモニターし、業者がアマゾンのサイトでの価格よりも安く販売していないかどうかをチェックしている。もし、他サイトでより安価な商品が見つかれば、アマゾンはその業者の同じ商品を自社サイトで大々的に表示しない。事前にその影響を業者に伝えるとしている。

司法長官「業者は他サイトで安価に販売できない」

 ラシーン司法長官は、「アマゾンが結ばせている契約によって、業者は他のサイトでより安価に販売できなくなり、消費者に不利益をもたらしている」と指摘。アマゾンに対して違法な価格協定をやめるよう求めている。

 例えば出品業者は米ウォルマートのサイトで、より安価に販売したいと考えている。しかし業者はウォルマートに対し、アマゾンでの販売価格より高くしてほしいと要求するという。ウォルマートでの低い価格が見つかれば、アマゾンにおける自社の地位が低下し、事業が脅かされると懸念しているとする。

アマゾン「割高な商品を勧めるわけにはいかない」

 これに対しアマゾンは、「出品業者は我々のオンラインストアで提供する商品の価格を独自に設定している。司法長官は全く逆の考え方をしている」と反論している。

 「安価な商品を提供していることに誇りを持っている。当社は多くの小売業者と同様に、割高なものを目玉商品として扱うことはしないし、その権利を持つはずだ。当社の価格規定は、過剰な支払いから消費者を守ることを目的にしている」と主張。

 「司法長官の主張は、割高な商品を消費者に売り込むよう我々に要求するもので、反トラスト法の本来の目的と逆行する」とも反論した。アマゾンでは、価格や配達の迅速さなどを考慮し、どの商品を顧客に勧めるかを決めているという。