侍ジャパンの稲葉篤紀監督(写真:Penta Press/アフロ)

 これで東京五輪の野球競技は本当に盛り上がるのか。

 台湾プロ野球を統括する中華職棒大連盟(CBPL)が25日に東京五輪最終予選(メキシコ)へのCBPL所属選手の派遣を断念したと発表。野球のチャイニーズ・タイペイ代表を構成する役割を担う中華民国棒球協会(CTBA)もCBPLと協議の上、これを了承したことで世界の球界全体に衝撃が広がっている。

 東京五輪開催国の日本が新型コロナウイルスの「第4波」に見舞われる中、これまで封じ込めに成功していた台湾でも感染拡大が広がり、CBPLは現在もリーグ中断に追い込まれている。こうした背景からCBPL側は派遣断念の理由を「自国の選手たちの健康と安全を守るための判断」と説明。CTBAはアマチュアや米マイナーリーグ所属の選手たちを中心にチャイニーズ・タイペイ代表チームを編成しての予選参加を視野に入れ、26日にも再度検討を進めていく方針だが、状況はかなり厳しいようだ。今後の展開次第では野球のチャイニーズ・タイペイ代表そのものが東京五輪最終予選を全面的に辞退する可能性もある。

最終予選のレベル低下に直結する台湾プロ野球選手の派遣中止

 すでに台湾側は新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、当初自国で予定されていた東京五輪最終予選の開催地を返上。20日に開催地がメキシコへと変更されている。また、今月7日には中国が理由を明かさないまま野球代表の最終予選参加を辞退。これにより同予選は現状、米国大陸予選において2位、3位となった国が加わり、オーストラリア、オランダ、そして国内プロ選手抜きのチャイニーズ・タイペイと5つの代表チームで東京五輪出場権の最後の1枠を争う予定となっている。

 東京五輪最終予選を巡る“ゴタゴタ”には日本球界からも困惑の声が広がる一方だ。野球日本代表・侍ジャパン関係者の1人は「東京五輪の野球競技がますますドッチラケになってしまうのではないか」と懸念し、次のようにも本音を打ち明ける。

「野球強豪国の台湾がCBPLのメンバーを派遣しないとなれば、代表チームの力はガタ落ちになる。台湾が参加したとしても二線級メンバーになってしまっては、東京五輪最終予選全体のレベルも大きく下がってしまうのは必至。この予選はランク的には下位とはいえ、中国も不参加を決めている。米国も従来通り五輪の野球代表はメジャーリーグの選手が不在。いくら東京五輪の本大会で『野球世界一の国が決まる』と大会関係者がアピールしても、説得力に欠けてしまう」