ソウルの日本大使館前で実施される水曜集会(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(田中 美蘭:韓国在住ライター)

 韓国で日本政府に対する抗議活動が行われる場合、ソウルの日本大使館前で行われることが多い。抗議活動の様子は、日本のメディアにも度々取り上げられているので、記憶にある人も多いのではないだろうか。

 ただ、日本大使館の前の歩道は公道であり、日本大使館前で許可なく抗議活動を行うことは「不法占拠」にあたる。だが、ソウルの日本大使館前に関しては、こうした正規の許可を得ていない抗議活動が日常茶飯に行われている。改善される様子はなく、むしろ放置状態と言っていい。

 韓国には現在、数多くの市民団体が存在しているが、韓国の市民団体の歴史を紐解くと、1960年代の民主化闘争に遡り、民主化闘争とともに韓国に根づいてきた。事実、1980年の「光州事件」や1987年の「6.29民主化宣言」を経て、市民団体の地位は確立された。

 そして1990年以降に、市民団体の主張が従来の「民主化」から福祉や教育など生活に関するものや、ジェンダー平等など幅広い分野に広がり、大小様々の団体が誕生した。

 韓国の市民団体に見られる特徴として、左派や右派に限らず分野や地域を越えて繋がっているケースが多い。その連帯感が時として社会に大きな影響を与えている。

 韓国では前述した民主化闘争の影響で、1980年代まで学生運動が盛んだった。だが、韓国の生活水準が向上したことに加えて、海外旅行や留学が自由化されたことで学生たちの価値観も多様化した。今では、学生運動は時代遅れという認識である。

 その状況下、一部の学生たちによる日本への抗議運動が活発化し、注目を集めている。「韓国大学生進歩連合(大進連)」。福島原発汚染水の海洋放出に対して、日本大使館前での抗議活動を主導している団体である。