「セントビンセント及びグレナディーン諸島」の海岸(Pixabay)

 カリブ海に「セントビンセント及びグレナディーン諸島」という小国がある。台湾を国家承認しているという非常にめずらしい国だ。なぜ中国ではなく台湾と国交を結んでいるのか? そこには、カリブ海の位置に起因する意外な理由があった──。ルポライターの安田峰俊氏が、中国に対峙する12カ国の姿を描いた『中国vs.世界 呑まれる国、抗う国』(PHP新書)より一部を抜粋・編集してお送りする。(JBpress)

人口11万人の小国

 セントビンセント及びグレナディーン諸島、という国をご存知だろうか。非常に説明的な名前だが、れっきとした国家の正式名称である。

 この国はカリブ海東部に浮かぶ小アンティル諸島を構成する島国のひとつで、国土は主島であるセントビンセント島と、30以上に及ぶサンゴ礁の島々(グレナディーン諸島)からなる。以下、本稿では便宜的に「セントビンセント」と呼ぶことにしよう。

 すこし前に映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』(2003年公開)のロケ地に選ばれたことでやや名前が知られたものの、セントビンセントは絵に描いたような小国(ミニ国家)である。人口は11万人、面積は約390平方キロメートルで、おおむね熊本市や山形市と同程度だ。

「セントビンセント及びグレナディーン諸島」の位置。首都はキングスタウン(出所:外務省)