(写真:アフロ)

専門家の意見を尊重してこなかった菅内閣

 5月16日から北海道、岡山県、広島県にも緊急事態宣言が発令された。5月14日午前7時から行われた政府の基本的対処方針分科会で西村康稔経済再生相が当初諮問したのは、群馬、石川、岡山、広島、熊本の各県へのまん延防止等重点措置の適用だった。

 だが専門家らが次々と強い異論を唱えたため、西村氏はいったん中座し、菅義偉首相や加藤勝信官房長官、田村憲久厚労相らと緊急に協議。菅首相が「それが専門家の結論なんだろう。なら、それでいいじゃないか」と述べ、急きょ方針が転換されたという。まるで他人事のような発言だ。「先頭に立って、全力で頑張ります」と決意表明をしていたのは菅首相だ。このどこが先頭か。もともと信用してはいないが。

 菅首相は、コロナでの記者会見の際、分科会の尾身茂会長をいつも同席させている。自信を持った説明ができないからだろう。だが専門家の意見を聞くわけではない。この間、しょっちゅう無視してきた。Gotoトラベルなどは、その典型だ。「旅行で感染が拡大したというエビデンス(根拠)はない」などと言って強行した。新型コロナウイルスは人の移動で感染が拡大するなどというのは、常識中の常識である。結局、政府が音頭をとって全国に感染を拡大させることとなった。

 それがいま何と言っているか。東京、関西3府県への緊急事態宣言によってゴールデンウィーク中の「人流は減った」と言っているのだ。だが、東名、中央、関越の各高速道路は連休中大渋滞になっていた。どこが減っているのか。